日本伝統の手水を守るために開発した新商品。商品に込めた想いを伝えられるクラウドファンディングでの販売に挑戦。
株式会社唐箕屋本店
代表取締役(四代目) 小保田庸平 様
唐箕屋本店さんの事業内容を教えてください。
弊社は神社、御堂の建築、神棚、御神輿等の製造、販売をしている会社です。明治28年創業、『唐箕』と呼ばれる木製の農機具を製造からはじまりました。
戦後、農機具の機械化によって唐箕の需要がなくなっていく中、その技術を活かして家庭用の神棚や御神輿の製作や神社の社殿や拝殿といった神社建築物を手掛ける宮大工・宮師へと変化していきました。創業から120年以上、岐阜の地で商いをさせていただいています。
ネットショップで販売している商品について教えてください。
コロナ禍にお客様の力になりたくて「マイ柄杓」を開発しました。
はい。今回、オリジナル商品として「マイ柄杓(自分の柄杓)」を新たに考案し、製造しました。コロナ禍で社会のさまざまな部分で自粛を求められたり変化を強いられたりしていますが、弊社のお客様である神社においても感染症対策として「手水」が禁止されていきました。
神社の方々からも対応に苦慮されている悩みを聞いていました。もちろんコロナ対策は必要ですが、そうした状況でも参拝において心身を清める大切な儀礼である手水を復活させることはできないかと考えました。もちろん「大切な日本の文化を守りたい」、「お世話になっている神社の皆さんの力になりたい」という気持ちもありました。
はじめてのネット販売で「マクアケ」という手法を選んだのはなぜですか?
当初はアマゾンで売ればいいのかなと軽く考えていました。
そうですね。最初、ちらし屋さんにネットショップの相談をしたときはアマゾンで販売するつもりでした。特に深い意味はなく、アマゾンなら自分も馴染みがありますし、低コストで販売できるイメージがあったからです。「マクアケ」のことは、ちらし屋さんから提案していただくまで知りませんでした。クラウドファンディングという言葉は聞いたことはありましたが、それと自社商品の販売とはまったく結びついていませんでした。
“アタラシイものや体験を応援購入する”。“世の中をもっと良くするチャレンジが毎日続々と登場”。そのようなマクアケのコンセプトは「マイ柄杓」にピッタリだと思いましたし、商品を購入してもらうためには、商品そのものの情報を伝えるだけでなく、自分の柄杓をもっていくという“新たな参拝スタイル”に共感してもらう必要があるというアドバイスにも納得できました。
そこからは商品の開発・製造と並行して、「マイ柄杓」に込めた私たちの想いを言葉にして、お客様に伝わりやすい表現を突き詰めていく作業をしました。もしアマゾンで販売していたら、数枚の商品写真とサイズなどの簡単の説明文だけの商品ページを作っていたでしょう。ネットショップでは単に商品を販売するだけではなく、商品を通じて私たちの想いまで伝えることができることを教えていただき、目からウロコが落ちる想いでしたし、本当に良かったと思っています。
「マクアケ」で販売した結果を教えてください。
目標をはるかに超える売上と想像もしていなかった大きな反響がありました。
願いを込めて作った「マイ柄杓」ですが、私たちにとって初めての試みであるだけでなく、そもそも世の中にない商品でしたので、売れるどうかの不安はありました。気持ちとしては「50万円くらい売れてくれたらいいな…」と思いながら、マクアケでの目標額は20万円に設定したくらいです。ところが、ふたを開けてみると最終的に350万円を超える購入をいただきました。想像以上の結果で製造・発送に大忙し……うれしい悲鳴でした。
驚いたのは想像もしていなかった反響をいただいたことです。マクアケを公開すると、リリースを出したわけでもないのにNHKをはじめさまざまなテレビのニュースで取り上げていただけました。また、数多くのお客様の声をいただけたことも励みになりました。コメントのひとつひとつから、私たちの想いが伝わっていることを感じられ、売上げ以上の喜びを得られました。
「マクアケ」での販売を経て、自社のネットショップを立ち上げましたね。
「マクアケ」でニーズを実感できたので、自社サイトでも安心して販売をはじめることができました。
そうですね。「マクアケ」で得た感触から、まだまだニーズはあると感じたので自社サイトから購入できるようにしました。こちらではシンプルに購入するための機能に特化しています。
最後に、ネットショップの開設をお考えの方にひと言いただけますでしょうか。
商品特性を理解して適切なサポートをしてくれるパートナーは大切です。
はい。今回、弊社は初めての挑戦で期待を超える成果を出すことができました。それは「プラットフォーム選定」と「お客様への想いの伝え方」によるものだと考えています。商品の特性によってさまざまだと思いますが、今回の私たちの商品に関しては、多くの人が利用するアマゾンで他社と同じように商品ページをつくって販売するという発想では成し得ない結果を出せたと思います。
ネットショップをはじめる際は、どうしても「売る」ことに意識が向いてしまいますが、特に独自の商品を扱っている場合は、もう一度商品に向き合って最適な手法を選ぶといいのではないかと思います。そのためには自社だけでなく、第三者の目線で商品を理解してくれて、かつネットショップの専門知識を有するパートナーの力を借りることをおすすめします。