本社オフィスより。
自社WEBサイトの「ウェブアクセシビリティ」への対応について、当社からも情報発信を続けていますが、公共機関はもちろん、公共機関の運営をサポートする企業、そして民間企業からもご相談をいただく機会が増えてきました。少しずつですが「ウェブアクセシビリティ」が広まっていると実感できるようになってきました。
今回は「そもそもウェブアクセシビリティって何??」というご相談・疑問の解決に役立つ記事を書いています。
ウェブアクセシビリティとは?
「ウェブアクセシビリティ」とは障害の有無や年齢、使用する端末や場所に関係なく、誰でも同じようにWEBサイトを利用できることです。
「みんなにやさしいWEBサイト」にしていくことですね。
ウェブアクセシビリティ(Web Accessibility)とは、WEBサイトを示す「Web」と、近づくことができる・アクセスすることができることを示す「Accessibility」を組み合わせた造語です。
WEBサイトに訪問した人が、障害の有無や年齢・利用環境等にかかわらず、WEBサイトで提供されている情報やサービスを利用できるようにすることです。
この「ウェブアクセシビリティ」を向上させていく取り組みを「ウェブアクセシビリティへの配慮」や「ウェブアクセシビリティ対策」と呼んでいます。
ウェブアクセシビリティを向上させていくために
「ウェブアクセシビリティ」を向上させていくために、ではどのようなことをするのか対策の一部を紹介します。
1.写真や画像の「代替テキスト」設定
WEBサイトではたくさんの写真や画像が使用されていますが、視覚に障害がある方はどんな写真や画像が使用されているのか判断することができません。多くの場合、読み上げツール(スクリーンリーダー等)を使用してWEBサイトから情報を得ているため、画像に代替テキスト(Alt属性)を設定することで読み上げツールでも写真や画像の内容が分かるようになります。
2.文字サイズの変更
高齢者や弱視の方にとってWEBサイトの小さいな文字は読みづらいものとなります。WEBサイトの文字を自分の読みやすいサイズに変更したり、必要に応じて文字サイズが変更できるようにします。
3.読みやすいカラーデザイン
色弱・色盲の方は、WEBサイトの背景色と文字色の組み合わせによっては文字が読みづらくなります。例えば赤色の背景色に緑色の文字を使用している場合などです。色数が多すぎたり、色だけで違いを表現したり、コントラストを強くしすぎると、一定の利用者にはとても読みづらいWEBサイトになってしまいます。
こうした不便さを解消し、カラーユニバーサルデザインとも呼ばれる色覚の多様性に配慮したデザインを行います。
ウェブアクセシビリティが注目されている理由
2024年4月から、障害者差別解消法の改正法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が施行されました。
この改正法では、これまで国や地方公共団体などに義務付けられていた「合理的配慮の提供」が、民間事業者に対しても義務化されることとなりました。
「障害がある方への合理的配慮の提供の義務化」とは、社会生活の中に存在する障害を取り除くことに対して、負担が重すぎない範囲で対応する義務があるということです。
例えば、
・車いす利用者のために段差を埋めるスロープを渡す
・窓口対応にて、筆談や読み上げ・手話等による意思疎通ができるように配慮する
・障害の特性に応じて、働きやすいように労働時間や職場のルールの変更等を柔軟に行う
等です。
WEBサイトの場合では、ウェブアクセシビリティを確保したWEBサイトを作成することが求められるようになりました。
そのため、いまウェブアクセシビリティについての関心が高まっています。
違反したら罰則はある?
「ウェブアクセシビリティ」への配慮・取り組みを行わないことで、罰則を受けることはありません。
法律により定められたことを守らなかったら罰則があるのでしょうか。現在のところ、障害者差別解消法において合理的配慮の提供を行わないことによる罰則は定められていません。
ただし障害者の権利・利益を著しく侵害するような差別が繰り返し行われ、それに対して改善が期待できない場合は、その事業を担当する大臣が勧告を行ったり報告を求めることができます。この報告義務を怠った場合には、罰則(20万円以下の過料)が科せられることもあります。
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け>(内閣府)」
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65_qa_kokumin.html
民間企業がウェブアクセシビリティを導入するメリット
罰則がないのであれば、時間・費用をかけて「ウェブアクセシビリティ」を向上させる必要はないのではないか?と考えてしまうかもしれません。しかし、それでも自社WEBサイトのウェブアクセシビリティを向上させるメリットは十分にあります。
1.誰にとっても使いやすく、わかりやすいWEBサイトになる
情報が整理され、表現もわかりやすくなるため、WEBサイト利用者が迷う場所が減り使いやすくなります。これにより会社やサービスに対する理解度が向上し、問い合わせや注文の増加を期待することができます。
2.企業イメージの向上
どんな人にも使いやすくわかりやすいWEBサイトを用意していることは、その会社のイメージアップに繋がります。利用者目線でサービス提供を行っていることをアピールしたいのであればウェブアクセシビリティにも配慮していることが求められるでしょう。
そしてウェブアクセシビリティには「JIS X 8341-3」というJIS規格があり、国際規格「ISO/IEC 40500」と同等の規格として扱われています。自社のWEBサイトが国際規格に準拠しているとアピールすることで、自社に対する安心感や信用の獲得を期待することができます。
3.SEOにも効果あり
検索エンジン対策であるSEOの評価においても、ウェブアクセシビリティは効果的です。SEOの基本は「ユーザーにとって使いやすく価値のあるWEBサイトを評価する」ことです。
このことはまさにウェブアクセシビリティが求めるものと同一であり、ウェブアクセシビリティを確保したWEBサイトを制作・運営することは、SEOの評価にもつながることになります。
4.訴訟対策
海外では、全盲のファンが女性歌手のWEBサイトに対してウェブアクセシビリティが十分ではないとして訴訟を起こした事例があります。多くの利用者が訪問するWEBサイトではウェブアクセシビリティの不備が一部の利用者にとって不利益や損失につながることが考えられ、これが訴訟問題につながる危険性もあります。特に日本国内だけではなく海外ユーザーも利用することが多いWEBサイトではこの問題に留意してウェブアクセシビリティの確保に努めたほうが良いでしょう。
5.将来的な義務化に対応できる
2024年現在、ウェブアクセシビリティは罰則のない範囲で運用されています。しかしこれが将来的にさらに厳格化される可能性は十分に考えられます。
もし直近でリニューアルを検討しているのであれば、ウェブアクセシビリティに配慮したWEBサイト制作を行うことをおすすめします。
ウェブアクセシビリティを確保しているWEBサイトとは?
「ウェブアクセシビリティ」が確保されたWEBサイトとは具体的にどんなWEBサイトでしょうか。またそれを確認するにはどうしたらよいのでしょうか?
WEBサイトの利用者は、様々な障害特性を持つ方や利用状況が考えられるため、それぞれを個別に考慮した上でWEBサイトを制作することはとても困難です。
そこで「ウェブアクセシビリティ」には、一定の基準を定めたガイドライン・規格が用意されています。この規格を基準として対応状況を確認することで、それぞれのWEBサイトがどれだけウェブアクセシビリティを確保しているかを知ることができます。
1.国際規格:WCAG
国際的に使用されているのが、W3Cという団体が定めたガイドライン「WCAG」です。1999年にはじめて策定され、それ以降、世界ではこのWCAGを基準にしてウェブアクセシビリティ対応が行われています。
W3C公式サイト(現在、日本語バージョンは準備中)
https://www.w3.org/
2.日本国内規格: JIS X 8341-3
日本国内の工業標準化の促進を目的としたJIS規格(日本工業規格)において、アクセシビリティについて策定されているのが「JIS X 8341」です。
そしてウェブアクセシビリティに関する規格が、この中の「JISX8341-3」にあたります。
JISC 日本産業標準調査会
http://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISSearch.html
この他に国際規格を制定するISOが定めたガイドラインもありますが、2024年現在、どのガイドラインも同じ内容に改定されているため、どれを使用しても違いはありません。
ウェブアクセシビリティをチェックするツールがたくさん存在していますが、いずれかの規格に対応したチェックツールであれば、等しくウェブアクセシビリティをチェックすることができます。
ウェブアクセシビリティ対策のご相談
当社では「ウェブアクセシビリティ」の対策・導入支援サービスを提供しています。
お客様が継続的にウェブアクセシビリティの向上に取り組むことができるようにご提案致します。
当社では、ウェブアクセシビリティに配慮したWEBサイト、JIS X 8341-3:2016への適合を目指したWEBサイトの制作及び運営サポートを行っています。
・「ウェブアクセシビリティに配慮」したWEBサイト制作
・「ウェブアクセシビリティ監視ツール」で、常にアクセシビリティを確保した状態に保つ
国や地方公共団体のWEBサイトに導入されているレベルと同じ品質のウェブアクセシビリティを確保できるWEBサイトを制作し、公開後にコンテンツを追加しても常に監視・最適化を行ってウェブアクセシビリティを確保できる環境をご用意いたします。
ウェブアクセシビリティの対応についても、どこまで対応するか、事業内容やWEBサイトの規模・機能、そして予算やスケジュールにもよって異なります。
お客様の事情にあわせたウェブアクセシビリティ対策をご提案させていただきます。
現状のWEBサイトのウェブアクセシビリティ診断なども無料で行っていますので、まずはお気軽にご相談ください。