2024年4月に施工された障害者差別解消法改正法により、民間企業でもWEBサイトにおけるウェブアクセシビリティの合理的配慮の提供が義務化されました。
これにともない、自社WEBサイトに「ウェブアクセシビリティ方針」ページを設置する企業が増えています。
そこで「ウェブアクセシビリティ方針」ページとは何か、どんなWEBサイトが設置をするべきなのかについて解説いたします。
ウェブアクセシビリティ方針ページとは?
WEBサイトのアクセシビリティ対応度を確認する規格としていくつかのガイドラインが使用されています。
日本ではJIS規格である「JIS X 8341-3」が策定されており、多くの日本企業のWEBサイトにてJIS X 8341-3 に従ったウェブアクセシビリティ対応が行われています。この「JIS X 8341-3」ではウェブアクセシビリティ対応状況を表記する方法として、広く「準拠」「一部準拠」「配慮」という表記が使用されています。
例えば、このような表記です。
表記例:JIS X 8341-3:2016 の適合レベルAA に準拠
この表記はWAIC(ウェブアクセシビリティ基盤委員会)[https://waic.jp/]が作成した対応表記であり、この表記をWEBサイト上で使用するには、ウェブアクセシビリティ方針ページを設置して、そこで自社のアクセシビリティの方針を提示・公開することが必須とされています。
表記 | ウェブアクセシビリティ方針の提示又は公開 | 目標とする適合レベルの達成基準の試験結果 | 追加で表記が必要な事項 |
---|---|---|---|
準拠 | 必須 | 試験を実施し、達成基準を全て満たしているを確認した上で試験結果を公開する | なし |
一部準拠 | 必須 | 試験を実施し、達成基準の一部を満たしていることを確認する。試験結果の公開は任意。 | 今後の対応方針・部分適合を適用する場合は、その記述 |
配慮 | 必須 | 試験の実施の有無、結果は問わない | 目標とした適合レベル又は参照した達成基準一覧 |
つまり、ウェブアクセシビリティのガイドラインである「JIS X 8341-3」に従ってウェブアクセシビリティ対応を行って、その対応状況や対応度をWEBサイト上にて掲載したい場合には「ウェブアクセシビリティ方針」ページを公開する必要があります。
ウェブアクセシビリティ方針ページの掲載内容
「JIS X 8341-3」では、ウェブアクセシビリティ方針を定めることを推奨しています。以下の項目について方針を決めていくことで、ウェブアクセシビリティ方針ページに掲載する内容が決定します。
項目 | 必須/任意 | 適合レベル |
---|---|---|
ウェブアクセシビリティ方針 | 必須 | すべて |
目標とする適合レベルおよび対応度 | 必須 | すべて |
対応範囲 | 必須 | すべて |
対応範囲外 | 必須 | すべて |
独自のガイドライン | 任意 | すべて |
試験結果 | 必須 | 準拠 |
任意 | 一部準拠/配慮 | |
今後の対策 | 任意 | 一部準拠/配慮 |
目標達成期限 | 任意 | 一部準拠/配慮 |
更新履歴 | 任意 | すべて |
担当部署/お問い合わせ先 | 任意 | すべて |
ウェブアクセシビリティ方針
自社WEBサイトが、ウェブアクセシビリティ対応のために「JIS X 8341-3」への対応を取り組んでいることを宣言します。
目標とする適合レベルおよび対応度
目標とするガイドラインの適応レベルを決定します。
例
- JIS X 8341-3:2016 適合レベルAに配慮
- JIS X 8341-3:2016 適合レベルAAに一部準拠
- JIS X 8341-3:2016 適合レベルAAに準拠
など
目標とする適合レベルについては、公共機関は「AAへの準拠」を求められますが、民間企業は自社の考え方やWEBサイトの規模を考慮しながら決定し、継続的に取り組むことをおススメします。
「準拠(一部準拠・配慮)」という対応度の表記は、情報通信アクセス協議会ウェブアクセシビリティ基盤委員会「ウェブコンテンツのJIS X 8341-3:2016 対応度表記ガイドライン – 2021年12月版(https://waic.jp/docs/jis2016/accessibility-plan-guidelines/202112/)」で定められた表記による。
対応範囲
ウェブアクセシビリティ対応を進める範囲を明記します。
例
- 株式会社◯◯◯のWEBサイト(https://www.example.co.jp/)全体
- 当社が運営するサービスサイト
https://www.example.net/
https://www.example2.net/
複数サイトがある場合や一部ページのみ対応する場合、ページによって目標とする適合レベルが異なる場合は、それぞれの範囲を明記しましょう。
例
以下に該当するページは異なる目標とする
- 各ブランドサイト(適合レベルAに配慮)
https://www.example1.com/
https://www.example2.com/
https://www.example3.com/ - 2020年3月以前から存在するページ(適合レベルAに配慮)
など
対応範囲外
この部分には、ウェブアクセシビリティ対応を行わないページやコンテンツがあれば明記します。
例
- Youtubeの動画再生プレイヤー
- 挿入したGoogleMap
- 指定したディレクトリ以下のコンテンツ
- 古いコンテンツ(20XX年4月以前に作成されたコンテンツ)
など
独自のガイドライン/追加達成基準
「JIS X 8341-3:2016」以外にも、国際規格「WCAG」や自社独自のガイドラインを策定して対応を行う場合はそれを記載します。
試験結果
適合レベル「準拠」の場合は、基準をすべて満たしていることを示す試験結果の掲載が必要です。適合レベル「一部準拠」「配慮」の場合は、試験結果の掲載は任意です。
今後の対策方針
対応度が「一部準拠」の場合は、目標達成に向けて今後どのような取り組みを行っていくかを記載します。
今後の対応
2023年3月以降については、以下の対応を行い、引き続きの品質維持と向上に努めて参ります。
- 本サイトに掲載するメディア種別ごとのアセット作成、およびオーサリングに関わるガイダンスをもとに、今後、新規作成するコンテンツについての品質維持をはかる
- 本サイトで管理する新規フォーマットのウェブページや既存テンプレートを改修する際は、企画や制作仕様策定の段階からウェブコンテンツのアクセシビリティを要件に入れ、リリースまでの各検討フェーズで充分な検証を実施する
これまでの取り組み
主要ページを対象とした試験の他、改善と試験による状態の確認を繰り返し、2023年3月の時点においては、おおよそのページについてレベルAAまでの要件を満たしていることを確認しております。
ただし、掲載しているコンテンツの性質や、外部サービスを利用している箇所において、一部アクセスすることが難しい、またはアクセスし難い箇所がございます。ウェブサイトご利用時に目的の情報取得ができない、またアクセスが難しい場合は、お手数ですが本ページ下部のお問合せ先までご連絡ください。
株式会社コンセント「ウェブアクセシビリティ方針」より引用
https://www.concentinc.jp/web_accessibility/
現在判明している問題と今後のスケジュール
令和5年度の試験において、複数の問題があることが判明しております。
参議院法制局「ウェブアクセシビリティ方針」より引用
参議院法制局として残った問題に対して令和6年度から修正を行います。
また、継続的に試験を行い、ウェブアクセシビリティの確保に努めてまいります。
https://houseikyoku.sangiin.go.jp/accessibility.htm
目標達成期限
目標を達成する期限を宣言します。
例
- 達成期限 令和7年(2025年)12月31日
など
更新履歴
試験結果の掲載履歴やウェブアクセシビリティ方針ページの更新履歴を記録として残しておきます。
担当部署/お問い合わせ先
ウェブアクセシビリティ対応の担当部署の記載および問い合わせ用の連絡先を明記します。
配慮段階でもウェブアクセシビリティ方針ページは設置するべき?
適合レベルへの準拠や一部準拠に至っておらず、まだウェブアクセシビリティ対応が本格的に始まっていなくても、ウェブアクセシビリティ方針ページは設置するべきでしょうか。
企業として「ウェブアクセシビリティ対応」に取り組んでいることを周知させるためにも、ウェブアクセシビリティ方針ページは設置しておくことをおススメします。
具体的な今後の対策方針や達成期限などが明確になっていなくても、ウェブアクセシビリティ対応に配慮した取り組みを行っていることや、ウェブアクセシビリティについて改善要求を行いたい場合の受付窓口を公開しておくことは、利用者に対して行う合理的配慮の提供となります。
また花王株式会社のように、配慮段階であるものの、独自のガイドラインを策定して取組状況を積極的に発信しているWebサイトもあります。
社名 | 目標企画 | 目標適合レベル | 対応状況 |
---|---|---|---|
株式会社ネットアドバンス | JIS X 8341-3:2016 | AAへの準拠 | AA 準拠 |
GRAND CYCLE TOKYO実行委員会 | JIS X 8341-3:2016 | AAへの準拠 | AA 準拠 |
育さぽとやま | JIS X 8341-3:2016 | AAへの準拠 | AA 準拠 |
日本ガイシ株式会社 | JIS X 8341-3:2016 | AAへの準拠 | AA 準拠 |
成田国際空港株式会社 | JIS X 8341-3:2016 | AAへの準拠 | AA 準拠 |
味の素株式会社 | JIS X 8341-3:2016 | AAへの準拠 | AA 準拠 |
パナソニック ホールディングス株式会社 | WCAG 2.0及びJIS X 8341-3:2016 | レベルAA 一部準拠 レベルA 準拠 | |
株式会社コンセント | JIS X 8341-3:2016 | AAへの準拠 | レベルAA 一部準拠 レベルA 準拠 |
株式会社 明治 | JIS X 8341-3:2016 | AAへの準拠 | レベルAA 一部準拠 |
岩崎電気株式会社 | JIS X 8341-3:2016 | Aへの準拠 | レベルA 準拠 |
財務局 | JIS X 8341-3:2016 | AAへの準拠 | レベルA 一部準拠 |
参議院法制局 | JIS X 8341-3:2016 | レベルA 一部準拠 | |
デジタル庁 | JIS X 8341-3:2016 | AAへの準拠 | レベルA 一部準拠 |
長野県職員採用ホームページ | JIS X 8341-3:2016 | AAへの準拠 | 配慮 |
株式会社セガ | JIS X 8341-3:2016 | Aへの一部準拠 | 配慮 |
JFA | JIS X 8341-3:2016 | AAに配慮 | 配慮 |
経済産業省 中部近畿産業保安監督部 近畿支部 | JIS X 8341-3:2016 | AAに配慮 | 配慮 |
岩国パブリックサービス株式会社 | JIS X 8341-3:2016 | AAに配慮 | 配慮 |
花王株式会社 | WCAG 2.1 | AAへの準拠 | 配慮 |
ウェブアクセシビリティ方針の作成・決定に困ったらご相談ください
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