「Google Workspace 導入事例」で検索すると、有名企業の華やかな事例がずらりと並びます。ただ、自社と同じような規模の会社の話が見当たらず、物足りなさを感じた方もいるはずです。
この記事では、大企業向けの事例集との違いを整理したうえで、私たちが実際に導入を支援した中小企業の事例を1つ、具体的にご紹介します。自社に近い事例を探すコツもあわせて解説するので、最後まで読めば「何を参考にすればいいか」がはっきりします。
Google Workspaceの導入事例集を見る前に知っておきたいこと
Google公式サイトの導入事例ページには、航空会社や大手小売チェーンなど、名の知れた企業の事例が数多く掲載されています(Google Workspace 公式サイト「導入事例」)。全社で数千人規模のライセンスを一括導入し、生成AIの活用まで踏み込んだ内容が中心です。
従業員数十名規模の会社にとっては、スケール感が違いすぎて自社の参考にしづらいと感じることがあります。専任の情報システム部門がある大企業と、情シス専任の担当者がおらず、他の業務と兼務することが多い中小企業とでは、そもそもの導入の進め方が異なるからです。
私たちが導入支援の相談を受ける中でも、規模の近い事例を1つ知るだけで、活用イメージが一気に具体的になったというお客様の反応を何度も見てきました。ここからは、実際にご支援した事例を1つ、詳しくご紹介します。
中小企業の活用事例|行政書士法人の場合
ご紹介するのは、当社が導入支援を継続している行政書士法人の事例です。社名は差し支えがあるため伏せますが、業務内容や活用の流れはそのままお伝えします。
導入前の課題|複数のクラウドサービスに分散した業務
この事務所では、顧客向けのメール配信や名刺管理といった業務が、それぞれ別々のクラウドサービスに分かれていました。サービスごとにログインし直す手間があり、情報が一箇所にまとまっていない状態です。
似たような課題は、他の士業や小規模事務所でもよく見かけます。業務ごとに便利なツールを個別に導入した結果、気づけばサービスの数だけ管理画面が増えてしまうパターンです。
Google Apps ScriptとAppSheetを使った自社ツール開発
この事務所では、Google Apps Script(GAS)とAppSheetをフル活用して自社専用のツールを開発し、分散していた業務を少しずつ一本化しています。

| ツール | 役割 | 無料で使えるか |
|---|---|---|
| Google Apps Script(GAS) | スプレッドシートやGmailと連携した処理の自動化 | Google Workspaceの一部として無料で利用開始できる |
| AppSheet | スプレッドシートを土台にしたノーコードの業務アプリ開発 | Business Starter/Standard/Plus等ほとんどのプランでCoreプランが追加費用なし |
GASはGoogle公式のApps Script開発者向けサイトで「クラウドベースのJavaScriptプラットフォーム」と説明されている通り、スプレッドシートの自動集計やメール送信の自動化などに向いています。
一方のAppSheetは、Google Workspace公式ヘルプによると、Coreプランであれば追加費用なしで、Business Starter・Standard・Plusなどほとんどのエディションのユーザーが使えます。
この事務所では、この2つを組み合わせることで、外部の専門業者に開発を依頼せずに、自分たちの手で業務アプリを組み立てています。プログラミングを専門としない担当者でも、スプレッドシートの延長として扱えるのが大きなポイントです。
実際に当社が導入をサポートしたツールの一つが、顧客向けの一斉メール配信です。当社の別記事GAS×スプレッドシート×ドキュメントで作るメール配信システムの記事で紹介している仕組みをベースに構築しました。
配信先のリストは、ゼロから作り直すのではなく、この事務所がすでに持っていた名刺管理のデータをそのまま活用しています。名刺管理として蓄積してきた情報を、スプレッドシート上の配信リストに転用する形です。既存のデータ資産を生かせた点も、内製ならではのメリットと言えます。
導入後の変化|「少しずつ増やしている」段階
現時点では、すべての業務がGoogle Workspace上のツールに統合し終わったわけではありません。自社ツールの数を少しずつ増やしながら、対象業務を広げている途中の段階です。
この点は、事例として伝える際に大切にしたいところです。導入事例というと「一気に劇的に変わった」という語り口になりがちですが、現場の実態は段階的な積み上げであることのほうが多いと感じています。当社自身がこれまで使ってきたツールの構成を参考にしていただく場面もあり、支援する側・される側という関係を超えて、一緒にノウハウを積み上げている感覚があります。
大企業の事例集と中小企業の活用ポイントの違い
ここまでの事例を踏まえて、大企業の事例集とは何が違うのか整理してみましょう。
| 観点 | 大企業の事例に多い傾向 | 中小企業で意識したいポイント |
|---|---|---|
| ライセンスの導入 | 全社一括で導入 | 同じく全社一括が基本(メールアドレスの性質上、部署ごとの段階導入は選びにくい) |
| 活用の広げ方 | 生成AIの全社展開やグローバル拠点の統合 | GAS・AppSheetなど一部の機能・業務から使い方を広げる |
| 体制 | 専任の情報システム部門が主導 | 兼任担当者や外部の導入支援者と伴走 |
ライセンスそのものは、Gmailアドレスを社員全員に付与する性質上、大企業・中小企業を問わず全社一括で導入するのが基本です。行政書士法人の事例も、メールアドレスの都合上、一部の部署だけを先行導入するという形はとっていません。
違いが出るのは、導入した後の使い方を広げるペースです。大企業の事例は、投資できる予算も人員も桁違いです。そのまま自社に当てはめようとすると、かえって「うちには無理そうだ」という印象だけが残ってしまいかねません。中小企業が参考にしたいのは、規模感の近い会社が、何から手をつけて、どこで工夫したかという現場のプロセス。
自社で運用担当者を育てるという視点
行政書士法人の事例で私たちが特に注目しているのは、外部の専門業者に開発を丸ごと依頼するのではなく、自社の担当者がGASとAppSheetを扱えるようになった点です。
専任のエンジニアがいない会社にとって、業務アプリの開発は「外注するしかない」と思われがちな領域です。ですが、スプレッドシートを日常的に使っている担当者であれば、AppSheetは操作の延長線上で扱えます。GASも同様に、ある程度の学習は必要なものの、スプレッドシートやGmailの自動化から少しずつ慣れていける設計です。
私たちが導入支援の中で伝えているのは、最初からすべてを内製化しようとしなくてよいという考え方です。まずは簡単な自動化から触れてみて、担当者の理解が深まった段階で対象業務を広げていく。行政書士法人の事例も、まさにこの積み重ねの途中。
業種を問わずよく見られる活用パターン
行政書士法人の事例のように独自ツールを開発するケースだけでなく、標準機能をそのまま使うだけでも効果を感じている企業は少なくありません。私たちがこれまでの導入支援で実際に伺ってきた声は、できることの記事でもまとめています。
- メールとカレンダーがPC・スマホで連動し、外出先でも予定確認やメール対応がしやすくなった
- Google Meetでのオンライン会議が、他社ツールより手軽につながるようになった
- 迷惑メールの受信数が目に見えて減り、日々の確認の手間が軽くなった
これらは特定の業種に限った話ではなく、業種を問わず耳にする感想です。一方、行政書士法人の事例のようにGASやAppSheetまで踏み込んで使うかどうかは、社内に得意な担当者がいるかどうかで分かれます。無理に高度な使い方を目指す必要はなく、まずは標準機能の定着を優先するのも一つの選び方です。
標準機能の定着と自社ツール開発は、どちらか一方を選ぶものではありません。まずGmailやカレンダー、Meetといった標準機能に慣れてもらい、そのうえで「もっとこうできたら」という要望が出てきたタイミングでGASやAppSheetを検討する、という順番のほうが現場には浸透しやすいというのが私たちの実感です。
自社に近い事例の探し方
自社に合う事例を見つけるには、探し方に少しコツがあります。
Google Workspace公式サイトの導入事例ページでは、業種や活用シーンで事例を検索できます。大企業の事例が中心ではあるものの、自社と近い課題を扱った部分だけを拾い読みする使い方もできます。
Google Workspaceの正規販売パートナーは、独自に中小企業の事例を紹介していることがあります。公式の事例集より規模感の近い話が見つかる場合があります。
もっとも参考になりやすいのは、実際に近い規模で使っている会社の生の声です。商工会や業界団体のつながりで聞ける機会があれば、遠慮せず質問してみてください。
導入事例を参考にするときに気をつけたいこと
最後に、事例を読むときの視点について触れておきます。
事例記事はどうしても成功した部分が強調されがちです。行政書士法人の事例も、取材時点ではまだ発展途中であり、これから先も変化していく前提で読んでいただきたいと考えています。
「事例と同じツールを導入すれば同じ結果になる」とは限らない点も押さえておきたいところです。GASやAppSheetの使い方は、業務内容や担当者のスキルによって最適な形が変わります。事例はあくまで進め方の一例として捉え、自社の業務内容と照らし合わせながら、どこから着手するかを考えてみてください。
「自社に合うかどうか」を見極める視点については、料金プラン比較の記事や導入費用の記事もあわせてご覧いただくと、事例だけでは見えにくい費用面の判断材料になります。
よくある質問
まとめ
Google Workspaceの導入事例集は、大企業の華やかな話が中心になりがちです。ただ、中小企業が本当に知りたいのは、自社と近い規模の会社が何から手をつけたかという生きた手順。
この記事で紹介した行政書士法人の事例のように、GASやAppSheetを使って自社ツールを少しずつ育てていくやり方は、専任の情報システム担当者がいない会社にも現実的な選択肢です。
自社に近い事例が見当たらず判断に迷う場合や、自社の業務に合わせた活用方法を相談したい場合は、お気軽にお問い合わせください。

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